広島大学大学院 先進理工系科学研究科(工学系)
社会基盤環境工学プログラム
水工学研究室

Research

気候変動を考慮した豪雨の時空間分析及び
水害時の避難行動推定

気候変動により豪雨規模はさらに増えると想定されており、平成30年7月豪雨のような大規模水害は近年全国各地で発生しています。本研究室では、水害をもたらす原因となる豪雨の特徴について、過去90年以上の高解像度降水量データを用いて気象要因や流域特性を考慮した時空間的分析を実施しています。さらに、破堤などにより氾濫が発生した後の人的被害軽減に向けて、近隣住民への被害が危惧される際の避難所への最適な避難経路のリアルタイム検索を可能とするシステム構築にも取り組んでいます。

図:平成27年9月関東・東北豪雨時における鬼怒川流域内の3日間降水量 [mm/3dy] 図:平成27年9月関東・東北豪雨時における鬼怒川流域内の3日間降水量 [mm/3dy]
図:浸水域の広がり(青→水色)を考慮した避難経路検索 図:浸水域の広がり(青→水色)を考慮した避難経路検索

砂粒の動き、地形の変化、世界の土砂動態を
物理的に予測する

川を流れる水は、川底の砂を動かし、地形を変化させます。河岸の侵食は道路を削り、河床の上昇は氾濫を助長させ、山地からの土石流は住宅を押しつぶします。したがって、効果的な治水を考えるためには、土砂の運搬プロセスや地形の変化プロセスを理解することが不可欠です。本研究室では、地球規模の広域な土砂の動態、蛇行や扇状地などの形成過程、砂や礫の分級・運搬機構を物理的に解明し、それを予測するための新たなアプリケーションの開発に取り組んでいます。

図:河岸侵食による橋梁被災の解析例 図:河岸侵食による橋梁被災の解析例
図:世界の年平均土砂輸送量 図:世界の年平均土砂輸送量

開水路の流れと乱れ特性の解明とその解析法の開発

流体運動やその作用は波、渦、雲、浮遊砂、植生、地形などで可視化されます。これらは流体力学の基本であるナビエ・ストークス方程式を用いて説明できることから、あたかも流体粒子がその解を知っているかのように解釈できることは不思議で興味深いところです。この空気や水などの運動を明らかにする流体力学は建設、環境分野に限らず、機械、化学など広い分野で扱われています。河川などの水流は、水面と河床(および河岸)の移動境界を含む浅い流れで、流砂に関わる砂粒スケールから洪水伝播に関わる流域スケールまでの多重スケール流れであることが他の分野と一線を画しています。

本研究室では、底面せん断力によって生み出される水深スケールの渦運動が広域の浅い流れと三次元乱流運動の相互作用を支配するため、開水路の流れと乱れ特性の統一的な解釈と水理解析法の体系化を目指しています。そのために、洪水流などの河川流解析の大きな目的は、氾濫危険度予測のための水面の高さや、河床変動や局所洗堀予測のための水流による土砂輸送量を評価することであるため、底面に作用する力を評価することが本質的と考え、水深スケールの渦運動に着目した底面流速解析(BVC)法を開発、改良しています。また、底面、壁面や植生などの水流中に存在する抵抗体に作用する力を評価する抵抗則の構築し、それを用いた流れや土砂輸送解析法を検討しています。一方、構造物下流の跳水や津波などの段波では、砕波などの水面粒子の複雑な挙動が流れ場全体のエネルギー形態を大きく変えることから、これらと河道平面形の相互作用や水表面流場の解明とその解析法を検討しています。

洪水流解析による河口部の大規模二次流構造の解析

洪水流解析による河口部の大規模二次流構造の解析。
赤色が右回り、青色が左回りの渦を表している。
左は河口テラス、右側は河口砂州付近に逆向きの対の二次流が存在している。

水没礫群周りの流線の解析結果

水没礫群周りの流線の解析結果。
黒色、青色が河床表面、赤色が礫床内部を通過する流線で馬蹄形渦の影響を広く受けている。